牝肉奉仕士
第一話
12/05/14公開
(社会の最底辺の存在といえばいろいろあるだろうけれど、わたしは間違いなくその一人だろう)
殺風景な狭い仕事部屋のなかで美月はそんなことを考えていた。
(最低・・・)
普通の感性の人間には耐えられないその立場に自分がおかれているということが美月には甘美ですらあっ
た。
畳三畳ほどの小部屋は壁も床もタイルが張られ、浴室のような造りになっている。そして実際にシャワーも
設けられていた。
美月の部屋と隣り合ってもう一つ少し広い部屋があり、間にはガラスで出来た簡単な間仕切りはあるものの
出入りのためのスペースも設けられている。
隣の部屋は美月のいる部屋と違い、瀟洒な造りになっていて、いる者がくつろげるよう観葉植物やソファー
なども置かれていた。そして外部とつながる扉もその部屋にあった。
しかし美月は自分の意思では今いる部屋からは出ることが出来ない。壁につけられた丈夫な鉄の輪から延び
た鎖は美月の細い首につけられた首輪につながっていた。
美月は首輪以外は一切身に着けていない全裸姿だった。その姿がこの施設における三月の身分を良くあらわ
していた。
(わたしは…牝犬奴隷…。ただの奴隷ではなく牡犬のための奴隷…)
静かな部屋で美月はただ出番を待っていた。自分から何かする必要はないし、そもそもそういう『自由』は
美月には許されていない。
時間の流れを感じさせないその部屋で美月は、ほとんど何も考えることなく出番を待っていた。
そのとき、隣の部屋のドアノブが動いた。
美月はあわてて姿勢を正した。
姿勢をただしといっても正座をするわけでもなければもちろん起立をするわけでもなく、土下座の姿勢から
臀部を上げ背中を逸らした扇情的なポーズをとることが美月の『お客様を迎える正しい姿勢』だった。
第二話
12/06/18
部屋に入ってきたのはまず白衣を着た若い女性、この施設の職員であり美月にとっては同僚ともいえる存在
だったが、仕事中はその身分は天と地ほども違う。
ドアを開けた彼女に続いて入ってきたのは大型犬を連れた50代半ばと思われるやや太った中年女性だった。
「ジョニーちゃん、ほらあなたのお気に入りの牝犬ちゃんよ。ゆっくり楽しんでらっしゃい」
その中年女性は優しそうに微笑むとジョニーと呼ばれた大型犬の首輪をはずした。
「ウォーン!」
首輪をはずされるとジョニーは一目散に美月の側に駆け寄った。
「牝犬の美月です。御指名ありがとうございます。心を込めてサービスさせていただきます」
美月は屈辱的な姿勢のまま丁寧にジョニーに挨拶をして上下関係をはっきりさせてから身体を起こし、ジョ
ニーの身体に自分の身体を密着させながらブラッシングを始めた。
「痒いところはございませんか?」
まるで人間に聞くように美月は話しかけるがもちろん的確な返事は戻ってこない。それでも気持ちは通じる
ようでジョニーは目を細めながらときおり「クゥーン」と気持ちのよさそうな返事のような鳴き声をあげてい
た。
ブラッシングが終わると美月はジョニーの身体にシャワーをかけシャンプーを始めた。
生暖かいお湯をかけながら美月は手際よくジョニーの身体を洗っていく。つまり美月の仕事はトリマーのよ
うなものだったが、普通のトリマーとは姿や待遇だけではなくそのサービスもずいぶん違っていた。
第三話
12/11/3
シャンプーを終えると美月は中年女性のほうを横目で見た。
すでにその中年女性とジョニーを連れてきた職員の姿はなく、ソファーでくつろぐ女性は雑誌を読み、とくに
美月やジョニーに関心を払っていないようだった。
彼女にとってこれはジョニーの問題でしかないのだろう。
美月は視線をジョニーに戻すと四つん這いの姿勢になりジョニーの背後に回った。
「失礼します」
小さく囁くと美月は顔を上げ赤い唇をこともあろうかジョニーの肛門に押しあてた。
「クゥーン・・・」
ジョニーは大型犬らしからぬ声を上げて目を細めた。
ジョニーの気持ちよさそうなよがり声は美月のテンションを高めた。
(わたしは牝犬・・・、それもただの牝犬じゃなくって牡犬相手の売春婦・・・)
心の中でそうつぶやくと美月は舌先を細めてジョニーの肛門を丁寧に舐めた。
「ウッ、ウーン・・・」
表現しがたい声だったが、ジョニーが満足していることはその声からも表情からも明らかだった。
そしてジョニーの心のうちが一番分かりやすく表現されているのはその下腹部だった。
ジョニーの下腹部では抜き身の日本刀のように反り返った獣茎が赤く充血した粘膜を晒して勃起していた。
ジョニーの獣茎は一般的な人間のものと比べてもすでに大きく勃起していたが、ジョニーはある意味こういう
遊びに慣れていて、美月の舌先に反応してその獣茎をひくひくと震えさせておきながらまだ余裕を持ってい
た。
第四話
12/11/18
犬はお互いを舐め合うことによって親愛の情を確かめたり深め合ったりする。
ジョニーもまた、美月の奉仕によって得られた特別な快感のお返しをしようと思ったのか、まだ肛門を舐め
続けている美月から身体を離すと、逆に美月の背後に回った。
美月はジョニーの動きを察すると、それ以上舐め続けようとはぜずに上半身を床に押し付けて背中を反らし
てお尻を高く突き出した。
ちょうど真後ろに回ったジョニーの前に美月の淫処があらわになった。
美月の淫部はすでにだいぶ濡れていた。
犬の肛門を舐めるという異常な性行為をすることで美月もまた興奮していたのだった。
(わたしはメス犬・・・、わたしはマゾ・・・)
美月は心の中で呪文のように繰り返していた。
繰り返すうちに頭の中に白い靄がかかってきて理性が失われてくる。
そうすることによって美月は犬との性行為という異常な行為に集中しているのだった。
「あっ・・・」
美月が短い悲鳴のような、それでいて甘い声を上げた。
ジョニーのざらざらとした長い舌が美月の淫処をとらえたのだった。
滲む蜜液をすべて舐めるように、ジョニーは美月の淫処を激しく舐めたてた。
「あっ・・・、だっ、だめ・・・」
ジョニーの舌使いに息を荒げながら美月が呻く。
溢れる蜜液は止まることがない。美月のほうも準備は整っていた。
ジョニーはそのことを覚ると舌を止めた。
そして小柄な美月を包むようにのしかかると、その下腹部で抜き身の日本刀のようにそそり立っている獣茎を
美月の淫処に押し当ててきた。
第五話
13/1/28
激しく腰を振るジョニーが果てるのに、さほど時間はかからなかった。
本来ならば犬の交尾は時間がかかるものだが、美月は手際よく済ませるこつを心得ていた。
その下腹部を打ち付けるようにして、激しく獣液を美月の胎内に送り込んだあと、ジョニーの動きが一瞬止
まったところで、美月は腰を引いて結合を解いた。
己の獣液と美月の淫液で汚れたジョニーの獣茎は、いくらか硬度を落としていたものの、まだ大きく勃起し
たままだった。美月はくるりと身を返すと、身体を低く伏すようにさせてジョニーの腹下にもぐりこむように
させて、その獣茎に朱唇を押し当て、その舌で獣茎に絡みついた粘液をすくい取って清めていった。
ジョニーが、飼い主の中年女性に連れられて部屋を出て行き、美月がちょうど後片付けを終えたころ、さっ
きの女性職員が部屋に入ってきた。
「もう、今日は終わりよ。あがっていいわよ。」
すでに時刻は午後8時を回っていた。
午前10時から、休憩や待機時間はあったものの、美月が今日相手をした牡犬は6頭となり、あわただしい一
日となった。
女性職員の手によって、お座りの姿勢をとる美月の首に締められた首輪がはずされると、美月はようやく自
由を回復した。
牝犬から人間に戻る瞬間である。女性職員が再び部屋を去ってから、美月は立ち上がり、つながれていたあ
いだ眺めることしか出来なかった方の部屋の方に移り、戸棚にしまわれていた私服に着替えた。
(今日はずいぶん忙しかったわね・・・)
服を着ながら、美月は今日の一日、自分の身体を抱いていった牡犬やその飼い主たちのことを振り返った。
(やっぱりジョニーが一番相性がいいかも・・・。何度も誘われているし、そろそろ外であってみてもいいかし
ら)
第六話
13/2/5
美月の仕事は正式には牝肉奉仕士と呼ばれる専門職である。
その職場は主に動物病院や訓練センターなどで、性欲過剰症とされた牡犬の治療にあたることが主な業務で
あり、美月が働くのはかなり規模の大きい動物病院だった。。
とはいえ、実際のところ、治療と言ってもそれは名目でしかなく、投薬などの治療をおこなうわけではな
い。ジョニーとしたように交尾の相手をして、直接的に性欲を解消させることが美月の仕事だった。
つまるところ、牝肉奉仕士とは牡犬相手の獣姦専門の売春婦であり、それが実質的な美月の身分だった。
しかし、牝肉奉仕士は専門職であって牝犬とイコールではない。牝犬として扱われるのは業務の範囲だけで
あって、その業務を離れれば、きちんと人間として扱われていた。
「おつかれさまです」
タイムカードを押して、美月は守衛に帰りの挨拶をした。
その姿はいかにも普通のOLだったが、守衛は冷たく一瞥するだけで、他の職員に対するような挨拶は返さな
い。しかし、美月もそれに抗議することはなく、かえって申し訳なさそうに顔を伏せると扉を開けて外に出
た。
(今日の夕食は何にしようかしら)
(パスタがいいかな、でもお刺身も食べたいし・・・)
仕事を離れれば普通の若い娘と変わりはない。
しかし、いくら正式な身分は人間とはいえ、牡犬相手に身体を売る以上、一般の人は美月を牝犬としてしか
見ない。
彼女の周りには有形無形の差別や侮蔑があったが、そんな中途半端の辛いな立場にも、正式な牝犬にはなって
は得られないメリットもあって、それが、美月が牝肉奉仕士を続けている理由でもあった。
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