飼育部







第一話

08/08/03公開




 『牝犬の保護及び管理などに関する法律』が施行されて十数年が過ぎ、牝犬の存在も大分普通の存在になっ
てきていた。
 二十世紀後半からの人口増加、二十一世紀に入って起こった食糧不足、また男女の出産比率の偏りなどの解
決策として打ち出された牝犬制度は、人権問題とのバランスで度重なる改善がされつつも世界的に普及してき
ていた。
しかし牝犬の頭数が増えるに従って新たな問題も起こっていた。その一つが優秀な調教師の不足である。
牝犬になるということは、人間としての生活の困難な一面から解放されると同時に、すべての人権を放棄して
人間であることをやめるという過酷な生活を選ぶということでもあった。そのため牝犬になって幸せな生活を
送るためには、厳しいながらも適切な調教を受ける必要があるのだったが、どの訓練所でもそのための人材の
確保には苦労していた。
 牝犬調教師は医学、獣医学、心理学などの高度な知識も必要とする職業である。単にサディスティックな性
格であればなれるというものではなく、また牝犬志願者の女性の微妙な心理状態や性暴力の可能性などから
も、女性に大きく開かれた職業であり、優秀な調教師には高い名誉と安定した高収入が約束されていた。



「私ね、高校に入ったら飼育部に入ろうと思うの!」
「飼育部に入って牝犬調教師を目指そうと思うんだ!」
 夕食の席で高校進学を控えた妹の貴子が話すのを、姉の瑞希は感心したように聞いていた。
貴子は小学生のころから勉強が出来るうえにスポーツも万能で、牝犬調教師を目指す資格は充分にあった。ま
たはっきりとした性格、すらりとしたスタイルも他者を圧倒するものがあって瑞希からみても牝犬調教師には
向いているように思えた。
「それは素晴らしい。しかし牝犬調教師になるにはお金がかかるぞ。我が家にはそこまでのお金はないし
な・・・」
「そうよ、飼育部で牝犬調教師を目指すには、訓練用の牝犬は自分で用意しないといけないというじゃない?
訓練用の牝犬なんて私たちじゃ用意できないわよ・・・」
 娘の希望に喜びながらも父母の表情はさえなかった。現代の花形職業ともいえる牝犬調教師になるにはお金
も相当にかかるのも現実だった。
「分かってるわよ。それもちゃんと考えてあるの。だからお父さんお母さんに後で相談したいことがある
の。」
 貴子はそういうと少しだけ瑞希の方をみた。瑞希には貴子が見せた表情の意味は分からなかったが、勉強は
そこそこながらもスポーツは苦手で、性格はおとなしく体型も小柄と貴子とは対照的な自分には関係がない話
と決め込んで、あまり気にもならなかった。




第二話

08/9/30公開




 活気あふれる桜の季節、瑞希は高校二年生に進級し、貴子は新入生として姉と同じ高校に入学した。
「貴子、入学おめでとう」
 家庭で開かれたささやかなお祝いの席で瑞希は貴子にプレゼントの包みを渡した。中に入っているのは可愛
らしいボールペンだった。
「お姉ちゃん、ありがとう」
 さっそく包みを開けた貴子だったが、ボールペンを見ると少し表情が曇った。
(・・・)
 瑞希は不満げな貴子の表情に少し動揺した。
(他のものが良かったのかしら・・・)
 しかし、貴子が瑞希から欲しかったものは『モノ』ではなかった。
「お姉ちゃん、嬉しいけどこれは返すわ。私がお姉ちゃんから貰いたいものは他のものなの!」
「えっ・・・」
 妹の言葉の意味がわからず瑞希はおろおろとした。両親を見ると得心したように落ち着いて穏やかな笑顔を
している。家族四人の中で自分ひとりがこの状況を把握できていないことが瑞希をいっそう不安にさせた。
「そうそう、わたしからもお姉ちゃんにプレゼントがあるの。はい、これ!」
 貴子は落ち着かない瑞希に紙の包みを渡した。
「さあ、開けてみて!」
「・・・はい」
 瑞希は不安げに包みを開けた。
「えっ、まさか・・・これって・・・」
 瑞希は包みから出てきたものを見て激しく驚いた。中から出てきたのは赤い犬の首輪だった。
「可愛いでしょ。お姉ちゃん肌も白いし、首も細いからきっと似合うわ」
「貴子・・・、まさか姉のわたしに・・・」
「そうよ。わたしがお姉ちゃんから貰いたいものはお姉ちゃん自身よ。わたしの牝犬にはお姉ちゃんになって
欲しいの!」
 貴子は威厳にあふれる態度で、反論を許さない判決を言い渡す裁判官のようだった。
「そ、そんな・・・」
 大人しい瑞希は議論は上手ではない。これまでも何かあるとたいていは妹に言い負けてきた。瑞希は助けを
求めるように両親に視線を向けたが無駄だった。両親と貴子の間ではすでにもう話し合いが終わっているよう
だった。
「フフフ、牝犬といっても訓練用の仮の牝犬よ。本物とは違うわ。契約期間は二年よ。もっとも一年の延長が
あるけどね。契約期間が終われば普通の人間に戻ることだって出来るわ」
「・・・」
「お姉ちゃんがわたしの牝犬になってくれるならきっとコンクールでも優勝できると思うの」
 貴子の言葉は自信にあふれていた。すでに瑞希が牝犬になったあとのことまで考えているようで、不思議に
瑞希も牝犬になることが自分の運命の一つのような気分になってきた。
(たしかにそうかもしれない・・・。貴子は姉のわたしなんかよりも何でも立派に出来たし・・・、助けられ
るのはいつもわたし・・・)
 そのとき父が口を開いた。
「瑞希、最初は恥ずかしいし嫌だろうけれど貴子に任せればきっと乗り越えられるよ。私から見ても貴子には
調教師の才能があるし、瑞希には牝犬の才能があると思う。それに期間が過ぎてやっぱり嫌だったらそのとき
は人間に戻ればいい。それまでにはお父さんもお母さんも頑張って、貴子には新しい牝犬を飼ってやれるよう
にするさ。どうだい、貴子に任せてみないか?」
「そうよ、瑞希。あなたはとても優しいし貴子とだったらきっとうまく行くわよ。」
 母も父の意見に同調した。
「フフフ、でも今日まで普通の女子高生だったお姉ちゃんに、いきなり牝犬になる決心をしろというのは無理
かもね。少しだけ考えをまとめる時間をあげるわ。三日間、その間に心を決めてきてね。」
 すでに貴子の言葉は命令口調だった。もう貴子の中では瑞希が自分の牝犬になることは既定の事実らしい。
しかし瑞希には反論する気力はなかった。瑞希の中にもそのことを事実として受け入れ始めている自分がい
た。期間が過ぎれば人間に戻れるという父の言葉も不安な瑞希の心を落ち着かせた。
「はい・・・」
 瑞希は渡された首輪を握り締めると顔を上げてうなづいた。




第三話

19/2/3公開




 桜も散り青葉の季節になった4月も終わりのころ。生徒たちは大型連休を前にしてざわついていたが瑞希の
表情は重苦しかった。それは担任から放課後、校長室に来るようにいわれたためだった。
 呼び出された理由はわかっていた。
「失礼します、2年立花瑞希です。」
 校長室のドアを開けて中に入るとそこには校長と担任、それと担任とは別の二人の教師、そして二人の女生
徒がいた。
 二人の教師は養護教諭の佐々木と飼育部顧問の田口、二人の女生徒は飼育部部長の佐川幸子と妹の貴子だっ
た。
「立花瑞希さんだね。そこに座りなさい。」
 校長に促されて瑞希は貴子の隣に座った。
「申請の合った件ですが、まずは佐々木君のほうから説明してあげてください。」
「はい。まず健康診断の結果ですがまったく異常ありません。心理テストの結果も異常なし、適性検査の結果
も問題無しです。」
 校長は佐々木教諭の説明を聞き終えると続いて田口教諭に説明を促した。
「ええっと佐々木先生から心身の健康については太鼓判もいただけましたし、我が部としては立花貴子さん、
瑞希さんから申請があったとおりに立花瑞希さんを訓練用牝犬として採用することに依存はありません。佐川
はどうだ?」
 顧問に促された幸子は一瞬瑞希に視線を向けた。
 幸子も瑞希と同じ2年生、それも1年、2年と同じクラスであった。幸子の視線を受けて瑞希は寒気を感じ
て背筋を伸ばした。
「もちろんです。」
 幸子は抑揚無く答えたが瑞希は底知れぬ不気味さを感じた。
「ええ、まったく問題がないようなので校長としてはこの申請を許可します。ただ瑞希さんはあくまでこの学
校の生徒です。訓練も大事ですが学園生活を壊すようなことがあった場合は取り消すこともあるので規則を守
って指導に当たってください。」
 校長の説明が終わると瑞希は全員に対して深々と頭を下げて部屋を出た。




第四話

19/2/6公開



 飼育部、そして瑞希に課せられた規則、瑞希は寝る前の時間でそれをもう一度読み直していた。申請書につ
いていた書類にはいくつかの規則が記されていた。
 一番重要なものは瑞希が訓練用牝犬として数々の義務を追う期間。
それは貴子の話の通りに二年となっていた。ただし2年といっても年度が単位なので実際には高校3年生の3
月31日までで、1年の延長については満了日二ヶ月前から一ヶ月前までの間に双方の話し合いで決定すると
あった。
その間、瑞希は飼育部の部員に準ずる立場となり、部の活動中は牝犬としての義務を負わなければならない。
ただし、すべてにおいてというわけではなく訓練中や指導を受ける場合のみ牝犬としての服装、態度などが義
務付けられている。
牝犬としてふさわしい服装、態度とは原則としては全裸に首輪姿で調教係や部長、顧問に対しては絶対服従と
いうことだった。
瑞希に課せられている義務はおおむねこの二つで具体的な内容についてはよくわからない。ただ当初は絶対服
従の義務を負うべき相手が貴子だけだと思っていた瑞希にはかなりきびしい内容でもあった。
飼育部に課せられた義務は瑞希の心身の保護に関するものがほとんどで、瑞希が今までどおりの日常を守れる
ように、部活動としての活動以外では牝犬として扱うことが禁止されていたり、調教は貴子のみに許されてい
て指導や命令も顧問と部長までに限られていて、それは少しだけ瑞希を安心させた。
もちろん部活動としての活動のため性的な行為は同意の有無や性別に限らず禁止されていた。これは飼育部に
だけでなく瑞希にも課せられた義務であって自由恋愛すら禁止されていた。これは自由恋愛と称してレイプさ
れたりすることが無いように瑞希を守るための規則だった。
(こんな状況で恋愛なんてできるわけないじゃない)
 瑞希は苦笑したが笑えない規則もあった。
牡犬との恋愛、性行為の禁止。
(本物の牝犬になってしまえば牡犬とセックスすることになる・・・)
 瑞希は期間延長をしたり、そのまま本物の牝犬になる気は一切なかったが自分が人間としてかなり瀬戸際の
存在であることを理解するには十分なインパクトがある言葉だった。
(きっと辛いだろうけど何とかなるよね・・・卒業までのことだし・・・)
 瑞希はあえて楽観的になろうとした。
しかし延長について話し合うときには今回とは違って瑞希は牝犬として調教されている側、貴子は調教してい
る側。
圧倒的に力関係が異なる上に瑞希は卒業式を控えて授業はほとんど無く、瑞希の日常を守ることよりも貴子の
部活動を優先できる期間だということには気づいていなかった。




第五話

19/2/13公開 19/2/16改



  校舎の最上階の奥まったところにある飼育部の部室に向かう瑞希の足取りは重かった。
「お姉ちゃん、放課後になったら部室に来てね。」
 朝食を食べ終わった貴子の何気な言葉。しかしそれは瑞希にとっては重い命令だった。
「早かったわね。」
 部室の前では部長の幸子と貴子と副部長の3年の女子が待っていた。口を開いたのは幸子だった。社会で活
躍する調教師に女性が多いように飼育部の部員もほとんどが女子だったのは瑞希にとって不幸中の幸いだっ
た。
「今日は部員に紹介するだけだから気楽に思ってていいわよ。」
 何が気楽なのか、瑞希には理解しがたかったが、そういって部室に入る幸子や貴子たちに従って瑞希も部室
に入った。
 飼育部は学校からも特に優遇されている。そもそもそうでなければ瑞希もこのような立場になることも無か
っただろう。
その部室は最上階の人目につきにくいところに用意されていて、さらに普通の教室の二つ分以上の広さの部屋
があてがわれていて、その中は、顧問と部長のための事務スペース、部員の更衣室、会議や部員の休憩や簡単
な訓練を行う広間に区切られている。
もっとも、さすがにここで出来る訓練は限られたものになるため、週に四日は設備の整った地区の牝犬訓練セ
ンターを借りることになっていた。
 今日は訓練が行われない日になっており、広間は会議スペースとなっていて部員たちはそこに集まってい
た。その広間に瑞希は連れていかれた。
 瑞希が貴子の隣に座ると、幸子も議長席についてミーティングが始まったがその口から出た言葉は瑞希にと
って、あまりに唐突で信じがたい言葉だった。
「えっと・・・、とりあえず瑞希、脱いで頂戴」




第六話

19/2/16公開



(???)
 今日は訓練でもなく、部員に紹介されるだけのはず、だいたい幸子本人が「気楽に思ってていいわよ。」と
言っていたはず・・・、瑞希は当惑した。牝犬の調教という異常な環境下ならばともかく、みなが制服でそろっ
て席についているような場で一人裸にならなくてはいけない、瑞希は反発した。
「なんで訓練でもないのに私がここで裸にならなきゃいけないの?」
 瑞希の言葉に幸子が答えた。
「あら、ミーティングでも部活は部活。部活中は常に訓練もあれば指導もあるのよ。だから牝犬のあなたが裸
になるのは当たり前でしょ?」
 幸子の口調には有無を言わせない厳しさがあった。
「でも気楽に思ってていいってあなたが・・・」
 幸子のきびしい態度に瑞希は明らかにひるんだ。
「そうよ。気楽に脱ぎなさい。牝犬が裸になるなんて当たり前のことじゃない。命令されればどこでも裸にな
れるようになれば問題ないことよ。」
 分かったような分からないような理屈だったが、畳み掛ける幸子の言葉には迫力があった。
「貴子さん、瑞希も納得したようだし飼い主のあなたが脱がせて上げなさい。」
「はい、部長。」
 幸子に指名されて貴子が立ち上がった。
「お姉ちゃ、っと、瑞希、立ちなさい。」
 瑞希は力なく立ち上がった。
「部長の命令よ。すぐに脱ぎなさい。」
 抵抗したところで牝犬の義務は自分も納得して背負った義務。遅かれ早かれ脱ぐのは決まっていることでし
かない。瑞希はこれ以上の反抗をあきらめ、ブレザーのボタンに指を当てた。




第七話

19/3/11公開



 瑞希はもう一度幸子を恨めしそうに見たが、幸子の冷たい表情にすべてをあきらめブレザーを脱いだ。
 ブレザーを脱いだだけのことなのに部員たちの間には緊張が走った。
まだ女性の裸になれていない一年生はもちろんのこと見慣れているはずの上級生ですら、学校という公的な場
で同じ学校に通う生徒がおこなうストリップ劇には興奮を抑えることは難しいようだった。
ブラウスのボタンを一ずつはずしていく瑞希の指に注目が集まる。瑞希は絡みつくような視線にあえて気づか
ない振りをしながらブラウスを脱いだ。
「おおっ・・・」
 瑞希の白いブ肌とブラジャーが露わになると歓声のような声が上がったが、ますます興奮して食い入るよう
な視線で瑞希を凝視する一年生たちとは裏腹に、上級生たちの様子は明らかにトーンダウンしていたが瑞希は
それに気づかなかった。他の一年生たちと同様に興奮状態にいた貴子も気づくことは無かった。
 瑞希は一度ブラジャーに手を当てたが思い直してスカートのホックをはずすとスカートを脱いだ。
しかしさすがにそこで瑞希の手も止まり、それ以上はなかなか脱ぐことが出来なかった。そんな瑞希を見かね
たように幸子が口を開いた。
「まあ今日はそこまででいいわ。まだ牝犬の自覚が出来てないみたいだしね。とりあえずそのまま自己紹介し
て。」
 少し引っかかるような幸子の言葉だったが、とりあえずこの場で全裸になる屈辱から救われた瑞希だった
が、それでもきちんと制服を着ている部員たちの中、ただ一人だけ下着姿で自己紹介というのは十分すぎるく
らい屈辱的で衝撃的な出来事だった。









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