牝犬の保護及び管理などに関する法律







第一話

06/11/29公開




その日も水原奈緒は会社で、送られてきた書類のデーターをパソコンに向かって打ち込んでいた。奈緒の勤め
る会社はそれほど大きい会社ではなかったが『牝犬』を取り扱う会社としては大手と呼ばれる会社だった。
「それにしても牝犬になりたがる女性って結構いるものね」
 となりで同じようにパソコンに向かっていた町谷紀子がつぶやいた。
「ホントねぇ・・・、牝犬になるってどんな気持ちなんだろう・・・」
「きっと変態なのよ。普通の女なら牝犬なんかになるくらいなら死んだほうがましに決まっているわ」
「そうかな・・・」
 奈緒は手元の書類に視線を戻した。奈緒が打ち込んでいた書類も新規の牝犬志願者の書類だった。牝犬とな
った人間はすべての人権を剥奪され家畜の身分に落とされる。当然その取り扱いには慎重が期されていて政府
の厳しい制約が課せられていた。
 まずすべての牝犬志願者は成人でなければならなかったし、本人の自由意志に基づく志願でならなければな
かった。また晴れて牝犬となったあともきちんと適応して生きていけるかどうかについてもその容姿や性格そ
して健康などについて厳密な審査が要求されていた。その厳しい事前審査に合格した牝犬志願者のみが裁判所
の判決を得て初めて牝犬と認定されるのであった。
 そして牝犬となったあとは人間の戸籍からは抹消され、あらたに保健所において牝犬として登録されること
になる。こうしてすべての人権は剥奪された家畜として扱われることになるのであったが、その後も動物愛護
の観念と犯罪予防の見地から所有や売買に関しては厳しい制約が課せられていた。また病気や老化などによっ
て廃用となった牝犬についても保護が義務付けられており勝手に処分することは許されていない。
奈緒が勤めている会社はこうした牝犬に関するすべての事務処理や調教そして売買などの代行をおもな業務内
容としていた。
 牝犬志願者のほとんどは若い女性だった。少数だが男性の牝犬志願者もいたが彼らが晴れて牝犬となれた場
合はよっぽどの事情が認められない限りは性転換手術が施されることになる。もっとも男性志願者が牝犬とし
て認められる確立はかなり低かった。
牝犬に志願する人たちの事情はまさに人それぞれだったが、最も多い理由はやはり金銭問題だった。いま奈緒
がデーターを打ち込んでいる牝犬志願者もそんな女性の一人だった。
(24歳、女、志願理由・・・金銭問題)
 データーを打ち込む奈緒の手が止まった。
(金銭問題か・・・)
 政府は奴隷売買を禁じているので借金の形としてなどの直接的な金銭問題は認められない。ただし現実問題
として金銭を稼いで生きていく能力に欠けるなどのケースでは認められることも多かった。
 奈緒が打ち込むデーターは牝犬志願者のものばかりではない。裁判所においてあらたに牝犬と認定されたも
のたちのデーターもあった。
牝犬たちには裁判所で登録番号が与えられる。そして牝犬たちはその番号で保健所に登録されることになるの
だった。奈緒や紀子たちはその番号ごとに牝犬たちのデーターをパソコンに打ち込む。パソコンは政府機関の
コンピューターにつながっているのでこうしておけば牝犬たちのデーターは世界中どこでも閲覧できるように
なるのである。
 奈緒は新しく打ち込むデーターの資料に目を通した。それはあらたに牝犬と認定されたものたちのデーター
だった。その中にはしばらく前に奈緒自身がデーターを打ち込んだ牝犬のものもあった。
 かたかたと音を立てて奈緒は登録番号をパソコンに打ち込んでいった。
(D220612FJPと・・・)
 奈緒は登録番号を打ち終えた。奈緒がパソコンに打ち込んだこの番号は牝犬たちの肉体にも刻まれることに
なる。牝犬たちはその肉体にこの番号を焼き印されるのだった。奈緒が打ち込んできた番号はすでにかなりの
人数に及ぶ。奈緒は自分が打ち込んだ番号を白い尻に焼き印された牝犬たちの姿に思いをはせた。




第二話

06/12/03公開




 一日の疲れを風呂で流した奈緒は身体にバスタオルを巻いただけの姿で髪の毛を乾かしながら今日の出来事
を振り返っていた。
(やっぱり紀子が言うように変態なのかな・・・)
 奈緒は毎日自分が打ち込んできたデーターの女性たちのことを考えていた。
(そうよね、そうじゃないと牝犬なんかになれるわけないわ・・・)
 ドライヤーを置いた奈緒は片手をその下腹部に伸ばした。柔らかな絨毛が奈緒の花園を守っていた。
 牝犬になれば絨毛はすべて奪われる。それも一時的な剃毛ではなく永久脱毛処理を施されるのだった。奈緒
は自分の絨毛を強く引っ張ってみた。
「痛っ!」
 奈緒は小さな悲鳴をあげた。奈緒の指には数本の絨毛がつままれていた。いま自分で引き抜いた絨毛だっ
た。奈緒はその毛をゴミ箱に捨てるとその指を絨毛に守られた秘裂のあいだに這わせていった。
「あんっ・・・だめ・・・」
 妄想の中では奈緒はいつのまにか焼印を捺された一匹の牝犬になっていた。
 あくる日も奈緒は紀子と一緒にパソコンに向かって牝犬やその志願者たちのデーターを打ち込んでいた。デ
ーターを打ちながら奈緒の脳裏に昨晩の妄想が甦る。資料の中の牝犬や牝犬志願者に自分がオーバーラップし
てしまう。
「人前で裸晒して四つん這いで生きていくだなんて、本当にけだものと同じねぇ」
 そんな紀子の牝犬たちを蔑む言葉も、奈緒はまるで自分に向けられているかのように感じてしまい動揺を隠
すだけで精一杯だった。
(もしわたしが牝犬になりたいだなんて言い出したら、紀子はどんな顔するのかしら・・・)(きっと軽蔑す
るんだろうな・・・)
 奈緒は社内を全裸で引きずりまわされ同僚たちから軽蔑の言葉を浴びせられている自分を想像した。
(わたしに耐えられるかな・・・)
 とても辛いことに決まっていたが奈緒にはどこかしら甘美で誘惑的にも思えた。自分の中で牝犬になりたが
っている気持ちがあることを奈緒は今はっきりと自覚していた。
 仕事を終え自分のアパートに戻った奈緒はすぐに服を脱いだ。白いショーツには大きな染みが出来ていた。
奈緒は恥ずかしそうに脱いだ服をかごに放り込むと飛び込むようにバスルームに入った。
今日の奈緒の目的は身体を温めたり洗ったりするだけではなかった。すっかり準備を終えると奈緒は下腹部の
絨毛にたっぷりと良く泡立てたクリームを塗った。そして剃刀を手にとりその柔らかな絨毛にゆっくりとあて
ていった。
「あんっ・・・!」
 剃刀が肌に当たったとき奈緒は思わず甘い声を上げてしまった。奈緒の秘裂はクリームともお湯とも別の液
体ですでにたっぷりと濡れていて、全身がすでに敏感な状態になっていた。
(わたし・・・牝犬に近づくんだわ・・・)
 そう思うと奈緒の中で気持ちが高ぶってきた。奈緒はその気持ちに押されるように剃刀を動かしてその絨毛
をジョリジョリと丁寧に剃っていった。




第三話

06/12/05公開




 バスルームから出たとき奈緒の下腹部にあるべき絨毛はすべて失われていた。奈緒は鏡の前で絨毛を失って
童女のようになった自分の下腹部をやさしく撫でた。そして満足そうに微笑んだ。
(上手に剃れたわ・・・)
その美しい肌のケアを終え豊かな髪を乾かした奈緒はバスタオルすら身体に巻くこともせずに、全裸のままで
四つん這いになるとそのまま犬のようにベッドルームに這っていった。
 ベッドルームに置かれた大きな姿見の前で奈緒は犬のチンチンの姿勢になった。姿見に映ったあさましい牝
犬姿の自分に奈緒は興奮した。
(ああ・・・なんていやらしいの・・・)
 自分の中の淫らな心を否定したい、そう思いながらも自然と奈緒の右手は、守ってくれるべき繁みを失い剥
き出しにされた秘裂に伸びてしまう。
「ああん・・・」
 奈緒は人差し指で敏感な牝核を刺激して思わず声を出してしまった。
(ああ・・・だめよ、わたし人間なのよ・・・)
 しかし妄想のなかで奈緒はすでに牝犬だった。すべての人権を奪われ、名前の代わりに番号を与えられる一
匹の家畜だった。奈緒の人差し指はそのまま濡れそぼった秘裂の中に滑り込んでいった。
 激しい自慰行為の後だったが、目が覚めたときは若さのせいもあってか奈緒の身体に疲れは全く残っていな
かったが心の中に余韻は残っていた。いやそれは余韻などという生易しいものではなかったかもしれない。奈
緒の中で今までもやもやしていたものが今はっきりと形をなしていた。奈緒の心は、はっきりとした確信を持
って一つの方向に向かっていた。
(やっぱり私の生きる道は牝犬しかないんだわ・・・)
 いつもとは違った心を抱きながらもいつもと同じように出社した奈緒は、今日も紀子と席を並べてデーター
をパソコンに入力していた。しばらくして紀子が裁判所に書類を提出しに行くと言って席をはずした。
(いまがチャンスだわ・・・)
 奈緒の表情が固くなった。そして大きな緊張に奈緒の心臓は早鐘のように鳴り出し、実際に鼓動する音が聞
こえそうなくらいだった。しかし奈緒の決心は揺るがなかった。
奈緒は震える手で牝犬志願者のデーターを入力し始めたが、その内容は手にしている書類の内容とは全く違っ
ていた。それは水原奈緒自身のデーターだった。
無表情のまま奈緒は自分のデーターを一つ一つパソコンに入力していった。
(もう後戻りはできないわ・・・)
 奈緒は一度大きく深呼吸するとマウスをうごかして確認のボタンをクリックした。一度送られてしまったデ
ーターはもう奈緒一人ではどうすることもできない。奈緒にはもう後戻りの道は無かった。




第四話

06/12/15公開




 昼休みも終わり紀子も戻ってきて再び席を並べてパソコンに向かいだしたとき血相を変えて課長があらわれ
た。
「み、水原君、ちょっとこっちへ来なさい!」
「はい」
 あわてている課長とは対照的に奈緒は冷静に席を立った。心配そうな表情の紀子に「大丈夫よ」と一声掛け
ると奈緒は課長に連れられて事務室を出た。
課長に連れられて向かった先は社長室だった。
「水原君を連れてきました」
 社長室の中に入ると険しい表情の社長と部長の二人が奈緒たちを待っていた。
「水原君、こちらに来なさい」
 部長に命令され奈緒は社長の前に立った。
「水原君、これはいったいどういうつもりなんだい?」
 社長は机の上にプリントアウトされた一枚の紙を置いた。それは奈緒が打ち込んだ自分自身の牝犬志願者と
してのデーターだった。
「これは君が打ち込んだものだろう。いったい何の冗談だ!」
「・・・」
 厳しい言葉を投げかける部長に奈緒はうつむいて黙っていた。
「黙っていちゃわからない!何とか言いなさい」
 部長の口調はさらに厳しさを増した。
「・・・・・・冗談ではありません・・・」
 うつむいたまま奈緒は小さな声で答えた。
「えっ?」
 部長が意表を疲れたような表情をした。それは社長も課長も同じだった。
「冗談じゃありません!」
 今度は顔を上げて奈緒ははっきりとした口調で言った。
「冗談じゃない・・・?」
 社長の言葉に奈緒はしっかりとうなづくと両手を制服のスカートの裾に掛けた。そしてゆっくりとスカート
の裾をゆっくりと捲り上げていった。
「・・・」
 部長も課長も、そして社長も息をのんだ。誰も喋らないそして誰も動かない時間が止まったような重い空気
の中で、奈緒の両手だけがゆっくりとスカートの裾を捲り上げていった。
 スカートの裾が捲くり上がってストッキングすら着けていない奈緒の白い磁器のように滑らかな太ももがあ
らわになった。そしていったん止まったあと奈緒の両手が一気にスカートの裾を捲り上げた。
「おお・・・」
 誰がいったのかわからないが喚声のような声があがった。奈緒はスカートの下に下着すらつけていなかっ
た。しかしみんなが驚いたのはそのことだけではなかった。奈緒の大事な部分には本来あるはずの飾り毛が全
くなかったからだった。
 たとえ剃っただけにせよ、まるで永久脱毛処理を施された牝犬のように絨毛のすべてを失った身体を自ら晒
した奈緒の気持ちに気づかない人間はこの場所にいなかった。
 みんなの声にやっと正気に戻ったように肌を真っ赤に染めた奈緒はスカートの裾を元に戻した。
「・・・・・・冗談じゃありません・・・」
「わたし・・・真剣です・・・」
 奈緒はそのまましゃがみこんで泣き崩れた。その細い肩に課長が優しく手を置いた。
「・・・君の気持ちは分かった・・・会社としてもきちんと対応させてもらうよ・・・」
 社長の声は低く重々しかった。それは社長の真剣さをあらわしてもいた。奈緒は泣きじゃくりながらもうな
ずくと課長に肩を抱かれ社長室を後にした。




第五話

06/12/17公開




 その日は課長の指示で奈緒は会社を早退した。夜になって仕事を終えた紀子から心配するメールが着たが奈
緒は当たり障りのない返事を返しただけだった。
(ああ・・・もう後戻りはできないんだわ・・・)
 次の日は土曜日で会社は休みなのが奈緒にとっては救いだった。しかし月曜日は必ず来る。たぶん月曜日に
は会社のみんなも奈緒が自分で選んだ運命について知ることになるだろう。自ら望んだ道とはいえそのことを
考えると奈緒は気分が重くなった。
 アパートの部屋に閉じこもったまま奈緒は土曜日を過ごし日曜日が訪れた。
(念願の牝犬になるんだもの、しっかりしないと!)
 奈緒が自分にそう言い聞かせていたとき不意に玄関のチャイムが鳴った。
「あら!」
 玄関を開けるとそこには紀子がいた。
「あがってもいい?」
 紀子はそういいながらも返事を待つこともなく部屋の中にあがってきた。奈緒は紀子をテーブルに案内する
と紅茶を入れて出した。
「課長から聞いたわ・・・」
「・・・」
 向かい合った奈緒に紀子が切り出した。
「それでね、わたしが奈緒の担当になったの・・・」
「そう・・・」
 奈緒は緊張した。牝犬志願者になった以上、手続きのために担当がつくのは自然のことだったがまさか同僚
の、そして友人の紀子がなるとは思っていなかった。
「昨日、部長と課長に呼び出されてね、今後のことを話し合ったの・・・」
「・・・」
「でもね、いくら自ら志願したからってわたしたち奈緒がどれくらい牝犬に向いているのか全く分からないじ
ゃない」
「・・・」
「それでね、わたしが奈緒の牝犬としての適性をチェックすることになったの。だってわたしたちの会社の社
員が判決で不合格なんかになったら会社の恥じゃない」
「はい・・・」
 奈緒は紀子の表情を見た。紀子は威圧的でありすでに奈緒の対等の友人ではないことは明らかだった。
「まずね、奈緒には会社から新しい制服が支給されることになったの」
 そう言って紀子は持ってきた包みをテーブルの上に出した。
「開けてみなさい」
「はい」
 奈緒は包みを開けた。中から出てきたのは今までの制服と同じデザインの制服だったが、決定的な違いはス
カートの裾の長さだった。新しいスカートの裾は膝上20cm以上はある超ミニスカートでとても事務員の制
服とは思えないものだった。
(こんなスカートじゃ・・・)
 奈緒はあまりに短いスカートに驚いた。この裾の長さではちょっと姿勢を変えただけでスカートの中身が見
えてしまう。それどころか身を屈めたりしたら尻を隠せるかどうかも疑わしかった。
「フフフ、素適でしょう。明日からはこの制服で働いてもらうわ。だから今までの制服はここに持ってきなさ
い!」
 しかし紀子の口調には有無を言わせないものがあった。奈緒は従うしかなかった。
「はい・・・」
 奈緒は洗濯の終わっているきれいにたたまれた古い制服を紀子に差し出した。
「そうそう、あとね今日からはショーツもブラジャーも禁止よ。もちろん勤務中だけじゃないわよ。だからこ
の部屋にある下着も全部ちょうだい!」
「そ、そんな・・・」
 さすがに奈緒もすぐには従えなかった。部屋の中だけならばともかく通勤では電車に乗らなくてはならな
い。しかしそれよりも問題なのは会社でだった。今日与えられた新しい制服ではショーツをつけていなければ
大変なことになってしまう。ショーツを見られることすら恥ずかしいことなのにそれすらも許されないとなる
と・・・奈緒の心を言い表せない不安が覆った。
「あら、反抗的ね。でもね奈緒、牝犬になったら全裸だって晒さなきゃいけないのよ。わたしだって奈緒にこ
んなことさせたくないわ・・・。でも奈緒のためだと思って・・・」
 話しているうちに紀子の言葉は涙声になってきた。奈緒は牝犬に志願していながらわがままを言ってやさし
い友人を困らせている自分が恥ずかしくなった。
「・・・ごめんなさい・・・」
奈緒は紀子に謝ると、タンスを開けて中の下着をすべて紙袋に入れて紀子に渡した。
「わかってくれて嬉しいわ。でも奈緒、まだ下着は残っているじゃない、それもちょうだい!」
「えっ?」
 奈緒は当惑した。部屋にあったすべての下着はもう紀子に渡したはずだった。
「わからないの?奈緒が着ているのがあるじゃない!」
「そ、そんな・・・」
「さあ、その服も脱いで下着を渡しなさい!」
 いまさら逆らうわけにもいかなかった。奈緒は紀子の目の前で室内着のワンピースを脱ぐと、残っているブ
ラジャーとショーツを脱いで紀子に渡して全裸になった。そしてそのまま床に直接正座をして紀子から明日以
降の指示を受けた。