牝犬の烙印 前編







第一話
06/10/03公開




「翔子はいいな、家で犬が飼えて・・・」
「フフフ、大したことないって。それより裕香はホントに犬好きだよね。それも大型犬・・・自分はちっちゃ
いくせしてね」
大型のラブラドールレトリバー相手に飽きもせずに子供のように遊んでいる裕香に翔子は呆れた口調で言っ
た。
「アハハ、だって可愛いいんだもん。特にマックスは大好きよ」
「あら、お熱いこと・・・。まるで恋人同士ね。私はお邪魔みたいね」
「そんなことないって・・・きゃっ!」
 マックスに押し倒されて裕香が嬌声をあげた。マックスは裕香を押し倒すと上にまたがって裕香の顔をべろ
べろと舐めた。
「あ、そうそう、このあいだ先輩にエッチなDVD借りたんだけどその中にすごいのがあってさぁ、裕香の好
きそうな内容なんだよね。見てみない?」
 そう言って翔子が取り出したDVDのパッケージを見て裕香は驚いた。
「えっ、これって・・・」
 そこには四つん這いで背後から犬に犯されている女性の写真が印刷されていた。
「これって・・・まさか・・・」
「そうよ、犬とエッチしちゃうの。裕香犬好きでしょ!」
「でも犬が好きなのとこれとはちょっと違うような・・・」
「大して違わないって。とにかく見てみようよ!」
 突然の展開に戸惑う裕香だったが半ば翔子の強引さに押されて、そして多少の好奇心にも逆らえず結局は一
緒にそのDVDを見ることになってしまった。
 DVDの内容はたいしたものではなく、女優の腰にしがみついたゴールデンレトリバーがしばらく腰を振っ
たあとすぐに射精してしまい、そのあと女優がとまどいながらも犬のペニスをフェラチオしておしまいといっ
た程度のものだったが、裕香にとっては初めて見るアダルトDVDだったこともあって充分に刺激的だった。
 途中で「へえ〜」などと相槌を入れる翔子とは対照的に裕香は無言で食い入るように見ていた。DVDを見
終わったあと、裕香はとなりで伏せて目を閉じているマックスをつい意識してしまう自分が恥ずかしくてそそ
くさと翔子の家をあとにした。
「おはよう」
「・・・あ、おはよう・・・」
 翌朝学校で翔子に会っても裕香は昨日のことが恥ずかしくって眼を合わすことができなかった。挨拶もそこ
そこに足早に立ち去る裕香を見送る翔子の目はなぜか満足そうだった。
(フフフ、これからが楽しみね)
 翔子は口元を少し緩ませると裕香のあとを追って教室に向かった。




第二話
06/10/06公開




「裕香、私のこと避けてない?」
 放課後一人で帰ろうとしていた裕香を翔子が呼び止めた。
「えっ、そんなことないって・・・」
「嘘、避けてるよ。昨日あのDVD見てから変だもん」
「・・・」
 裕香は翔子の言葉を否定できず黙ってしまった。
「裕香には刺激強すぎたかな・・・、裕香犬好きだから喜ぶと思ったんだけど・・・」
「犬は好きだけど・・・」
 翔子は裕香の顔を覗き込んだ。
「じゃあもう避けないでね。裕香男苦手だし犬好きなんだから・・・これから家においでよ!」
 裕香はほとんど強引に翔子の家に行くことになってしまった。
 翔子の家には誰もいなかったが、裕香を見つけたマックスがすぐに飛びついてきた。
「あっ、だめよマックス!」
 しかしマックスは裕香にまとわりついて離れない。それは翔子の部屋に入っても同じだった。それどころか
座った翔子のスカートの中に鼻先をもぐらせてきたりしてきて裕香のそばからまったく離れない。
「もうどうしちゃったのよ、マックスは・・・」
「フフフ、マックスも裕香が大好きなんだから仕方がないよ・・・」
「えっ、そんなぁ・・・」
 そのときマックスがショーツの上から裕香の敏感な部分を舐めた。
「あんっ・・・」
「どうしたの裕香?エッチな声出して?」
 翔子がわざとらしく聞いた。あまりのわざとらしさに裕香は少しムッとしたが、あまりマックスが激しく舐
めてくるのでそれどころではなかった。
「あんっ、ダメよマックス・・・もう翔子何とかして!」
 裕香は翔子に助けを求めたが裕香を見る翔子の目は意地悪そうに輝いていた。
「裕香もマックスも相思相愛なんだから舐めさせてあげなよ。でもそのままじゃパンツ汚れちゃうから脱いだ
ほうがいいかな」
「そんなぁ・・・」
「でもこのままじゃ汚れちゃうよ!」
「でも・・・」
 結局翔子に押し切られ裕香はなんだかわからないままにショーツを脱ぐことになってしまった。裕香が渋々
とショーツを脱ぐとそれを翔子が強引に奪った。興味深そうに二人の様子を伺っていたマックスは翔子から目
で合図を受け取ると裕香のスカートの中に勢い良く鼻先を突っ込ませると剥き出しの裕香の秘所を舐め始め
た。
「あっ・・・ダメ・・・」
 裕香はあわてて足を閉じてマックスの頭を押し戻そうとしたが、すぐにその両手は翔子に押さえられてしま
った。翔子は近くにあったタオルで裕香の両手を後ろ手に縛ると、そのまま背後にまわって抱きかかえるよう
にして裕香の両足を大きく開かせた。
「これでマックスも集中できるでしょう。裕香もたっぷり楽しんでね!」
「あぁ、こんなのいやよ・・・」
 裕香は言葉では拒否したが特に抵抗もせずに翔子のするがままに任せた。




第三話
06/10/08公開




裕香の抵抗が収まったのでマックスは心置きなく裕香の秘所を舐め始めた。
「どう、オマ○コ舐められて気持ちいい?」
 翔子がわざと卑猥な言葉を使って裕子の耳元でささやいた。
「あぁ・・・ん、気持ちいい・・・」
 裕香の理性はマックスの激しい責めに次第に失われていった。もう翔子が無理に開かせていなくても裕香は
足を閉じようとはしなかった。翔子はあいた手で裕香の胸のふくらみを制服のうえから揉みしだいた。
「あっ・・・あん・・・だめ・・・」
 マックスが裕香の秘所を舐めるピチャピチャという音と裕香の喘ぎ声が静かな部屋に響いた。
「あん・・・マックス・・・いい・・・」
「フフフ、裕香ちゃんは犬にオマ○コ舐められて悶えちゃう変態なんだ?」
 翔子の意地悪な問いかけが裕香の被虐心を煽った。
(ああ、わたしは・・・犬になめられて・・・喜ぶ・・・変態・・・)
 友人の前で痴態をさらすことに辛さよりも喜びを感じている自分に裕香は気づいていた。自分の惨めな姿を
認識するほどに裕香の官能は高まった。
 そして裕香の官能の高まりに応えるようにマックスの舌の動きもさらに激しさを増していった。マックスの
舌は裕香の体からあふれ出てくる甘い蜜を求めてヴァギナの奥まで入ってきた。良く濡れた裕香のヴァギナは
マックスの舌を優しく迎え入れた。裕香は限界を迎えようとしていた。
「あっ、あん・・・わたしは・・・犬にオマ○コ舐められて・・・喜ぶ・・・変態・・・です・・・」
「あぁ、ダメ・・・、翔子見ないで・・・、いい・・・、あぁぁぁぁ・・・」
 自分の惨めさを認める言葉を自ら口にしながら裕香は絶頂を迎えた。しかしそれでもマックスは休むことな
く舌を動かして蜜をすすることをやめなかった。裕香は連続して何度も絶頂を迎えることになってしまい、マ
ックスの舌がようやく裕香から離れたときはすでに立ち上がることができないほどだった。
「気持ちよかった?」
 翔子は裕香の両腕を縛っているタオルを解いた。自由になった裕香は甘えるように翔子に抱きついた。
「うん・・・、気持ちよかった・・・」
 裕香は翔子を見上げてにっこり微笑んだ。




第四話
06/10/09公開




 翌日も翔子の家に誘われてきた裕香を玄関で出迎えたマックスはなぜかあんまり嬉しそうではなかった。そ
れどころか裕香に向かって怒ったような唸り声まで上げる始末だった。
「マックスどうしちゃったの?」
 悲しそうな表情をした裕香に翔子が笑って答えた。
「アハハ、マックスはもう裕香の彼氏気取りなんだよ。だから自分の牝犬に上から見下ろされるのが嫌なんじ
ゃないの?」
「えぇ、そんな・・・だいたいなんで翔子にそんなことまで分かるの?」
「だって私はマックスが赤ちゃんのときから育ててるんだから何だって分かるわよ!」
「そんなものかなぁ・・・」
 裕香は訝しげな顔をしつつも靴を脱いで四つん這いの姿勢になった。
「これで大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
 頼りない翔子の返事だったがマックスも満足したらしく「クゥーン」と鼻を鳴らして裕香の首に自分の首を
絡めてきた。
「アハハ、くすぐったいよ、マックス」
 マックスの機嫌が直って裕香も気を取り直したように明るくはしゃいだ。
「マックスの機嫌も直ったみたいで良かったね、裕香。でも四つん這いになっただけじゃまだ足りないんじゃ
ないの?」
「えっ?」
 裕香を見下ろす翔子の目が意地悪そうに光った。
「マックスがいつでも舐めやすいようにパンツも脱いでおこうよ!」
 そういうと翔子は返事も聞かずに裕香のスカートをまくしあげると可愛らしいデザインの淡いピンク色をし
たショーツを一気に下ろした。
「あんっ、ダメだよ翔子・・・」
 そう言いながらも裕香は膝を上げて翔子がショーツを脱がすのを手伝った。
 裕香の白い尻があらわになるとすぐにマックスが反応した。マックスは四つん這いの姿勢のため突き出され
たようになった裕香の白い尻の双丘のあいだに鼻先を突きこんできた。
「あんっ、ダ、ダメよ、マックス・・・こんなところじゃ・・・」
 裕香はあわててマックスの攻撃をかわした。
「ねえ、早く翔子の部屋に行こうよ」
 困り果てた表情で自分を見上げる裕香に翔子の嗜虐心はさらに煽られた。
「裕香、スカートもここで脱いじゃおうよ!」
「えぇっ、それじゃ丸見えだよ・・・」
「あら、じゃあここでマックスに可愛がってもらう?」
「そんなぁ・・・」
 結局、裕香は翔子に強引に押し切られスカートも脱がされてしまい、白い尻を丸出しにした姿で四つん這い
のまま翔子の部屋までいくことになってしまった。




第五話
06/10/12公開




 翔子の部屋に入ってもスカートもショーツも着けていない裕香はどうしても落ち着かない。翔子のおしゃべ
りをしていても雑誌を見ていてもどうしても剥き出しの下半身に気がいってしまいついつい物欲しそうな瞳で
マックスを見てしまう。かえって翔子が普通に振舞えば振舞うほど、友達の家で下半身をさらけ出していると
いう自分の異常な立場に気がいってしまい抑えることができなくなっていた。
 しかし翔子のほうはそんな裕香にあえて気づかない振りをして裕香をじらした。
「ねえ裕香、この服なんか可愛くない?」
「そうだね・・・」
 裕香はうわの空だった。
「もう、裕香ったらさっきから生返事ばっか、あっ、そうそう裕香が好きそうな本があったんだ・・・」
 そういって翔子が取り出した本は大型犬専門のペット雑誌だった。
「裕香この犬なんかどう?なかなか元気良さそうよ!」
「えっ・・・どうって言われても・・・」
 翔子はその本を強引に裕香に見せると載っている犬を指差しては感想を求めた。
「この犬なんか逞しそうよ。土佐犬だってさ、裕香可愛がられたいでしょう?」
「えぇー、でも・・・怖そうだし・・・」
 翔子の無邪気な態度につられ裕香も腰を上げて身を乗り出していた。その持ち上がった裕香の無防備な尻の
敏感な部分を後ろにまわっていたマックスが舐め上げた。
「あんっ!」
 裕香が甘い悲鳴をあげた。
「あら、マックスがやきもちやいちゃったかな。やっぱり裕香にはマックスが一番だね。おいでマックス!」
 裕香は翔子によって四つん這いの姿勢にさせられた。剥き出しの白い尻はマックスの前に無防備に突き出さ
れていた。
「裕香はマックスに可愛がってもらいたいんでしょ?」
「・・・」
「あら、可愛がってもらいたくないんだ・・・じゃあマックス連れて外に散歩にでも行ってこようか・・・」
「えっ、そんな・・・」
 言ってしまって裕香は後悔した。これでは自分からマックスに可愛がられたいと言ってしまったのも同然だ
った。もちろん翔子が聞き逃すはずもなかった。
「フフフ、最初から素直にしないとダメよ。さあ、もう一度自分でちゃんと言いなさい!」
 裕香は偉そうな翔子の物言いに不満だったが選択の余地もなかった。
「・・・マックス・・・可愛がって・・・」
 裕香は控えめに小さな声でマックスを求めた。しかし翔子は満足しなかった。
「そんなんじゃ何をすればいいのかマックスに分からないじゃないの。ちゃんとマックスに分かるように言い
直して!」
「・・・」
「さあ!」
 翔子の声が厳しくなった。マックスもじらされていらいらしているのが裕香にも感じられた。
(このままじゃマックスに可愛がってもらえない・・・)
裕香のなかで恥じらいよりも快楽への欲望が勝った。
「・・・舐めて・・・マックス・・・わたしの・・・わたしのいやらしいオマ○コを舐めて!」
 裕香の言葉を待っていたかのようにマックスは飛び掛らんばかりの勢いで裕香の白い双丘の谷間の敏感な秘
所を舐め始めた。




第六話
06/10/15公開




 たっぷりと焦らされたあとだけに裕香の官能の炎は一気に燃え上がった。
「あんっ・・・ダメ・・・イイ・・・」
 四つん這いで尻を突き出した姿勢は裕香の羞恥心をかきたてるだけではなくマックスにとっても舐めやすい
姿勢だった。マックスは鼻先を裕香の白い双丘の谷間に突きつけながら、大きな長い舌をヴァギナの中にまで
入れてきてあふれ出てくる甘い蜜を激しくすすった。
「あっ、あっ・・・イイ・・・あん・・・」
 ずっと焦らされてきた裕香が快楽の甘い泉に沈むのは早かった。すっかり理性を失っている裕香は翔子がデ
ジカメのシャッターを切るのにも気づかないほどだった。
「あんっ・・・ダメ・・・ああ・・・」 
ピチャピチャと音を立てて激しく舐めるマックスの舌の動きに裕香は我を忘れて腰を振って悶えていた。
「ああ、いい・・・マックス・・・好きよ・・・」
時折顔にかかった長い髪を手でかき上げながら、まるで恋人に言うような甘い言葉を口にして悶える裕香は同
性の翔子から見ても美しく見えた。
「フフフ、裕香ったらすっかりマックスにまいっちゃたようね。とてもお似合いよ」
「・・・あんっ・・・本当?」
「ええ本当よ。マックスも裕香のことがとても気に入ったみたいよ」
「あんっ・・・う、うれしい・・・」
 裕香は激しく喘ぎながら背後のマックスを振り返った。
「ひぃっ!」
 マックスを振り返った裕香は鋭い悲鳴をあげて言葉を失った。マックスの瞳はいつもの人懐っこい瞳ではな
く少し血走ったような鋭い眼光を光らせていた。それはまさに肉食獣の眼だった。しかし裕香が怯えた原因は
そればかりではなかった。マックスの股間に粘膜で覆われた巨大な赤い獣茎が隆々と勃起しているのを見たか
らだった。
(犯される!)
 裕香を支配していた興奮は一瞬にして醒め、代わりに恐怖が支配した。
「ダ、ダ、ダメ・・・」
 裕香はあわてて逃げようとしたが腰が抜けたように動けない。
「あ・・・わわわ・・・」
裕香は言葉にならない声を上げ身体を震わせながらもなんとかマックスに犯されないようにと膝を崩して床に
伏した。
 そんな裕香にマックスのほうも驚いていた。マックスにしてみればそれは当たり前のことだった。マックス
にしてみれば自分の牝犬を一生懸命に喜ばせたのである。次に自分が本望を遂げるのは自然なことのはずだっ
たのに牝犬が急に駄々をこねだしたのだから、本来なら怒り出してもおかしくはなかった。
 しかしマックスは賢く優しい犬だった。マックスは怒り出すこともなく怯える牝犬をなだめようと裕香に優
しく寄り添うと頬を優しく舐めた。




第七話
06/10/22公開




(マックス!?)
 優しい瞳に戻ったマックスに裕香は急に自分が恥ずかしくなってきた。
(あんなに愛してくれたのに、わたしマックスを裏切っちゃった・・・)
裕香はマックスを悲しませてしまったことを後悔した。
(マックスはずっとやさしかった・・・。今度はわたしが応えなくっちゃ・・・)
裕香はしっかりと眼を開くとふらふらと腰を起こして四つん這いの姿勢になった。
「マックス・・・今度はわたしがマックスのやさしさに応えないとね・・・」
 裕香はマックスを振り返るとやさしい笑顔で微笑んだ。
「マックス!」
 マックスが裕香に飛びかかろうとした瞬間、翔子が鋭い口調で叫んだ。マックスは主人の鋭い声にビクンと
身体をしならせると裕香に飛び掛るのをあきらめ翔子のほうに向き直った。翔子の鋭い口調にただならぬ気配
を感じたのか、勃起した股間の獣茎はみるみると縮んでいく。「マックス、今日はここまでよ。それに裕香も
よ」
 翔子はマックスにお座りをさせると、四つん這いのまま呆然としている裕香の前にしゃがみこんで優しく裕
香の髪を撫でた。
「裕香、あんまり無理しなくていいのよ」
「しょ、翔子・・・」
「いいのよ、急いで無理しなくても・・・」
 翔子はうなだれる裕香を優しく抱きしめた。緊張が解けた裕香の瞳からは一気に涙が溢れ出した。
「マックスに抱かれるってことは人間やめて牝犬になるってことよ。簡単に決めちゃ駄目よ。ゆっくり考えて
から決めましょう」
「・・・うん・・・」
 緊張がとけて泣きじゃくっている裕香は冷静な判断ができないままに、優しげな仕草で優しげな口調で語り
掛けてくる翔子の言葉に素直にうなづいてしまった。今の裕香には翔子は母親のような存在に感じられた。
「あなたたちが愛しあってることは良くわかったから・・・私がちゃんと面倒見てあげるわ・・・だから安心
していいのよ」
 翔子の口調はゆっくりとそしてしっかりとした口調だった。母親が子供に諭すようなその言葉
は混乱している裕香の心に染み入るように受け入れられていった。




第八話
06/10/28公開




 その夜、風呂からあがった裕香は机に向かって一枚の紙に書かれた文章を読んでいた。母
と二人暮しの裕香の家の生活はけっして豊かではない。裕香には自分だけの部屋は無かった
が今晩は母は出かけていて誰にも気を使うことなくゆっくりと読むことが出来た。
「マックスと結ばれるということは裕香は本物の牝犬になるということよ。もう一度よく考えてか
ら決めて・・・」
 そういって翔子が帰りがけに裕香に渡した封筒に入っていた紙には、パソコンでプリントアウ
トされた文字が連ねてあった。
(牝犬契約書・・・)
 そこに書かれていた内容は普通の女性にとっては耐えがたいほどの屈辱的なものであった
が今の裕香にとっては甘い誘惑であった。



牝犬契約書


1、三井裕香(以下牝犬と呼ぶ)はすべての人権を放棄した牝犬として犬飼翔子(以下飼主と呼ぶ)の飼犬に
なるものとする。
2、牝犬は飼主及び犬として先輩にあたるマックスを敬い最上級の敬語態度で接するものとする。
3、牝犬は出来る限り牝犬にふさわしい姿で牝犬らしい生活をするものとする。
4、牝犬は飼主の命令に常に従い、命令に反した場合は必要ないかなる懲罰であっても従容として受けるもの
とする。
5、牝犬はマックスに身も心もささげて一匹の犬として仕えるものとする。
6、牝犬は生活の出来る限りを犬としての生活するものとする。
7、飼主は牝犬の健康、安全、社会的地位に配慮し必要な保護を与えるものとする。
8、この契約の有効期限は契約日から一年とする。ただし飼主の意思によっては適時更新される。また牝犬は
契約の解除及び更新の拒否をすることは出来ない。
9、飼主は必要に応じて随時契約内容の変更及び追加、削除を行うことが出来る。



 裕香は何度もその文章を見直して深いため息をついた。契約の内容は曖昧な表現が多いものの裕香の人間性
を奪うものであることは間違いなかった。しかし裕香にはそこに翔子の悪意は感じられなかった。むしろ牝犬
として当然のこととすら感じていた。
(わたし・・・牝犬になるのかな・・・)
 裕香は不思議な気分だった。当たり前のことだが今まで自分が人間であることに疑いを持っ
たことなどまったく無かった。それが今は違っていた。裕香は自分が人間であるよりも牝犬であ
ることのほうが本来の姿のような気持ちになっていた。裕香は夢の中にいるような不思議な高
揚感を感じながら、裕香の人間性を奪う契約が書かれたその紙をそっとたたんで封筒に戻し
た。




第九話

06/11/03公開




 翌朝、裕香は普段よりもはやく登校した。教室にはまだ誰もいなかった。それでも裕香は辺りを一度うかが
ったあと昨日の封筒をそっと翔子の机の中に忍ばせた。
「おはよう!」
 他の生徒が登校してくるなか、裕香は斜め後ろの自分の席からそれとなく翔子の席を伺っていた。しばらく
してようやく登校してきた翔子はすぐに机の中の封筒に気がついた。
(もうあとには戻れないわ・・・)
 裕香の心臓は張り裂けんばかりの勢いで鼓動していた。翔子は封筒を手に取ると一度裕香を振り返ってから
封筒を開いた。
 翔子は封筒の中に入っていた紙を開いて少し見たあと、まわりの人に気づかれないようにすぐに封筒の中に
戻した。そして何事も無かったように席に着いた。
 裕香の緊張とは裏腹にまったく何事も無かったかのような翔子の態度は帰って裕香を不安にさせた。
(なにか気に入らなかったのかしら・・・)
 結局その日は翔子が裕香に話しかけてくることもなく、また裕香から話しかけることも出来ず放課後になっ
てしまった。
(どうしてなんだろう・・・)
 裕香は必死の覚悟をあざ笑うような翔子の態度に腹を立てるよりも不安を感じていた。それは飼主に捨てら
れたくない嫌われたくないという飼犬の心理に近かった。
(なんでかまってくれないの・・・)
 少し離れて熱い視線を送る裕香に翔子はもちろん気づいていたが、あえて気づかない振りをしているのか結
局その日は放課後まで二人が話すことは無かった。
「翔子・・・」
 放課後帰宅しようと下駄箱の前で上履きを脱ごうとした翔子の前に物陰から不意に裕香が現れた。翔子は周
りを見渡した。翔子と裕香の他には誰もいなかった。
「裕香・・・」
「翔子、何で何も言ってくれないの・・・」
 裕香の瞳から涙が溢れ出した。
「わたし・・・翔子の飼犬になりたい・・・そしてマックスの・・・」
「マックスの恋人になりたい・・・」
 そこまでで裕香は限界だった。裕香はそのまましゃがみ込むと泣き伏した。
「裕香・・・」
 翔子が裕香の頭に手を置き髪を撫でた。
「ごめんね、今日は冷たくしてしまって・・・。わたし、あなたの本当の気持ちが知りたかったの・・・」
 泣き伏していた裕香が顔を上げた。
「・・・それじゃぁ?」
「ええ、合格よ。きょうから裕香は私の飼犬、大切な可愛いペットよ!」
 翔子は優しげに微笑むと裕香に手を差し伸べた。




第十話

06/11/03公開




裕香は翔子の後ろを一歩下がって歩いていった。
(わたし・・・もう翔子のペットなんだ・・・)
 裕香の脳裏を全裸で首輪につながれ四つん這いで散歩をさせられる妄想がよぎった。もちろん妄想の中の裕
香のとなりには誇らしげに歩くマックスの姿があった。
(あぁ、わたしったら・・・)
 淫らな妄想に一瞬我を失った裕香はあわてて意識を現実に戻した。
「あら、どうしたの裕香?」
 一人で顔を白黒させている裕香に翔子が振り返って心配そうに声をかけたが、かえって裕香を混乱させた。
「あっ、あの、わ、わたし・・・、ううん、なんでもないです・・・」
「フフフ、変な娘ね・・・」
 翔子はまた前を向くと歩き出した。裕香もほっとしてまた翔子の後ろを歩き出した。裕香は翔子への自分の
言葉がいつのまにか自然に敬語になっていることに気づいて少し驚いた。つい昨日までは対等の友達だったは
ずなのに、今の裕香は翔子に敬語を使うことが自然に思えて嬉しかった。
 裕香は翔子の向かっている方向が翔子の家とは異なる方向なことに気づいた。しかし何もいわずに歩いてい
く翔子にペットの裕香が聞くことなどできなかった。
 翔子が向かっていたのは一軒の小さなペットショップだった。
「フフフ、裕香が私のペットになってくれた記念に素適なプレゼントをあげるね」
 嬉しそうに店の中に入っていく翔子につづいて裕香も見せの中に入った。
 こじんまりとした可愛らしいきれいな店だった。なかには30代後半くらいの男性の店員が一
人いた。
「いらっしゃい、あっ翔子さん」
 店員と翔子は顔見知りのようだった。
「こんにちは、今日はね、新しく飼うことになった犬のために首輪を買いにきたの」
 何事も無いような翔子の言葉に裕香は青ざめた。新しく飼うことになった犬が裕香のことを指していること
は明らかだった。
(で、でも、わたしがするって、ばれたわけじゃないし・・・)
 裕香はそう考え直して心を落ち着けようとしたが、次の店員の言葉が裕香のわずかな希望を打ち砕いた。
「ほう、こちらが新しいワンちゃんですか、可愛らしい素適なワンちゃんですね」
「フフフ、そうでしょう。昨日までは友達だったんだけど今日からわたしのペットになったの。さあ裕香、ご
挨拶しなさい」
「・・・」
 裕香は言葉を失った。望んで犬になることを誓ったとはいえいきなり初めてあった他人の前で犬扱いをされ
るとは思ってもいなかった。しかし翔子はそんな裕香の我儘を認めるほど甘い飼主ではなかった。
「さあ、裕香、ぐずぐずしないで!わたしに恥をかかせないでちょうだい!」
 翔子の厳しい言葉に促がされて裕香は崩れ落ちるようにふらふらと床に正座をした。そして両手を床につい
て這いつくばるように頭を下げた。
「・・・今日から・・・翔子さまに飼っていただくことになりました・・・牝犬の裕香です・・・どうぞ、よ
ろしく、おねがいします・・・」




第十一話

06/11/08公開




 店員に屈辱的な挨拶をする裕香の身体はかすかに震えていた。しかし決して不愉快ではなかった。今まで自
分を覆っていた人間という殻から解放されていくような不思議な感覚を裕香は感じていた。
「フフフ、わたしのペットになった記念に今日は首輪を買ってあげようと思っているのよ」
 翔子は従順な裕香の姿に嬉しそうだった。
「どれにしようかな・・・このピンクのどうかしら」
「こっちの白いのも上品でいいわね…」
 床に正座したまま顔を真っ赤にしてうつむいている裕香の顔を強引に上げさせて、その細い首に翔子は手に
取った首輪をあてては楽しそうに悩んでいた。店員も陽気に翔子に相槌を打っている。
自分の頭越しに自分を完全に一匹の犬として扱ったようなやり取りがなされているこの異常な状況に、裕香は
戸惑いつつも不思議な安堵感も感じていた。裕香は翔子の手で首に首輪が当てられるたびにはにかみながらも
翔子に軽く微笑んだ。
「やっぱり犬の首輪って言ったらこれね」
 そう言って翔子が最後に手に取ったのはいかにも犬の首輪といった様子の赤い革で作られた首輪だった。
「そうですね、このワンちゃん肌が白いから良く似合うと思いますよ」
「そうよね。やっぱり最初の首輪はこれよね」
 店員の言葉に翔子も満足げにうなづいた。
 お金を払った翔子が首輪を入れた袋を受け取ってようやく裕香はこの惨めな状況から解放された。
 店を出たあとの翔子の足取りは軽く、途中で寄り道をすることもなくまっすぐに家に向かった。
「ただいま!」
 元気良く玄関のドアを開けた翔子を出迎えたのは今日もマックスだった。マックスは嬉しそうに翔子の足に
まとわりついたあと裕香に向かって低い唸り声を上げた。
(ここで脱げっていうのね・・・)
 昨日も裕香は玄関でスカートとショーツを脱がされている。しかし裕香にとって今日は特別な日だった。た
とえ牝犬の身分に堕ちても裕香はただがっついて犯されるのは嫌だった。愛されて結ばれたい、それは裕香な
りの乙女心だった。
「マックス・・・今日は許して・・・部屋まで許して・・・」
 裕香の思いつめた気持ちはマックスにも通じていた。自分に逆らっているわけではない、マックスはそう理
解すると裕香に吼えるのをやめた。そして『ついて来い!』とでも言うように振り替えると翔子の部屋へ向け
てゆっくりと歩き出した。そのあとを苦笑いしている翔子と緊張し青ざめた面差しの裕香がついて行った。